高反発マットレスが選ばれる理由とは?選ぶときの基準や注意点もご紹介

「高反発マットレスが良いとは聞くけれど、結局のところ、体にどんな影響があるの?」と思っている方は案外多いのではないでしょうか。ここではそんな疑問に答えるべく、マットレスと正しい寝姿勢との関係や、寝返りの大切さなどを分かりやすく解説するとともに、高反発マットレスを選ぶときのポイントを紹介します。

高反発マットレスとは

「高反発マットレスが腰痛に良いらしい」といった評判を耳にする機会もあるかと思いますが、高反発マットレスには具体的にどんな特徴があるのでしょうか。高反発マットレスは低反発マットレスと比較すると分かりやすいため、それぞれの特徴をご紹介していきます。

体は真っすぐではない

それぞれのマットレスの説明に入る前に、私たちの体について少しだけ説明します。人の体は真っすぐではなく、肩甲骨あたりとお尻の部分が出っ張っています。これは背骨自体が緩やかなS字を描いているためです。この体の特徴を頭に留めておくと、高反発、低反発のメカニズムがぐっと理解しやすくなります。

高反発マットレスの特徴

高反発マットレスとは、その名の通り、反発力が高いマットレスのことです。高反発マットレスは、ものを置くと沈みますが、ある一定のところでストップし、そのあとはマットレスから押し上げる力が働き、ある程度まで元に戻ります。この戻る力を反発力といいます。

前述のように、人の体は肩甲骨と腰(お尻の部分)が出っ張っているため、寝姿勢になると出っ張った肩甲骨と腰が接地面に強く当たり、特に内臓が集まり骨盤が位置する腰部分は重たくなります。

このとき、体にかかる圧力の約30%が肩甲骨に、約40%が腰にかかっていますが、これを軽減するのが寝具の役割となります。高反発マットレスは、その反発力によって、沈みがちな肩や腰を適度に押し上げます。押し上げることで体全体が「面」となり、偏っていた圧力を体全体に分散させることができます。また、沈みがちな部分を押し上げることで、自然と正しい姿勢を維持できるようになるのです。

さらに、反発力が高いことによって、寝返りが打ちやすいという特徴もあります。高反発という言葉の響きから、「体に刺激がありそう」あるいは「硬くて体が痛くなりそう」と感じる方もいるかもしれませんが、そもそも高反発商品は、低反発商品と相反した性質を持っていることから高反発と呼ばれているため、この場合は、刺激や硬さがあるというより「弾力がある」と捉えた方が適切でしょう。ただし、柔らかい寝具に慣れている方は、高反発マットレスの寝心地に違和感を感じるケースがあるようです。

低反発マットレスの特徴

低反発マットレスは、反発力の低いマットレスのことです。ものを置くとゆっくり沈み込み、離すとゆっくり戻ります。低反発マットレスは体のラインに合わせて変形するため、体との接地面が広くなり体圧が分散されます。高反発マットレスとは異なる理由で体圧分散性があるのです。

低反発マットレスに使われている素材を低反発ウレタンフォームといいます。低反発ウレタンフォームは、NASAがロケット打ち上げのときにかかる宇宙飛行士への衝撃を緩和するために開発したことでも有名です。低反発の枕やマットレスは、寝具メーカーがその衝撃吸収力に注目して作るようになったのでしょう。最近では、ギューッと握ってその感触を楽しむ話題のおもちゃ「スクイーズ」にも低反発ウレタンが使用され、あらためてその触り心地が人々の支持を得ているようです。

以上を踏まえ、低反発マットレスの最大の魅力は、そのなんとも言えない心地良い触感や抜群の寝心地にあるのでしょう。低反発マットレスに横になった瞬間、まるで包まれているような心地良さを感じた方も多いのではないでしょうか。

しかし、一方でその反発力の低さによって寝返りが打ちにくいという性質を持ち合わせています。

動くときの反動を吸収してしまうため、寝返りが打ちにくく、たとえ上手に寝返りが打てたとしても、そこには余分なエネルギーが必要になります。これは、柔らかくてふかふかなソファから立ち上がるときを想像すると分かりやすいでしょう。低反発でふかふかなソファから腰を上げるときには力を要し、反対に高反発でしっかりとした座り心地のソファからは楽に立ち上がることができます。寝返り時にも、それらと同じような原理が働いているのです。

また、低反発マットレスは、時間の経過とともに重たい腰がさらに沈み込んでしまう傾向があるようです。こうなると体圧分散力は弱まり、正しい寝姿勢を維持することも難しくなってきます。

快眠のカギは「寝返り」と「寝姿勢」

では、「寝返り」と「寝姿勢」は体にどのような影響を与えているのでしょうか。

寝返りの役割

地球に重力がある以上、圧力をゼロにすることは不可能です。高反発も低反発も体圧分散力に優れているとはいえ、圧力がどこかに集中してしまうのは避けられません。そこで重要になってくるのが寝返りです。諸説ありますが、人は平均して20回ほど、多い人では40回くらいの寝返りを打つと言われています。

寝返りの主な役割は、「圧力を移動させる」、「血液循環を促す」、「発汗調整」の3つです。以下、説明していきましょう。

人は同じ姿勢のままでいると、特定の部位に圧力を受けます。圧力を受け続ける部位に違和感や痛みが生じるのは比較的想像しやすいかと思います。寝返りは、このような物理的な圧力から逃れるために必要な動作なのです。

また、圧力を受ける部位では血管やリンパ管も圧迫され、血液やリンパの流れが滞ります。流れが悪くなると筋肉が酸欠状態になり、いわゆる“凝り”を引き起こす原因にもなります。適度に血液の流れを促し疲労をためないためにも、寝返りは重要な役目を担っています。

さらに、マットレスや布団に接している部分は、熱がこもって汗をかきやすくなります。そのままの状態でいると不快感を覚え、途中で目を覚ましてしまうこともあるでしょう。しかし寝返りを打つことで、熱を逃がし新しい空気を入れ込むことができます。質の高い眠りには寝返りが大事なポイントになるのです。

正座をしているときを思い浮かべてみてください。正座をすると、圧力がかかっている部分が痛くなったり、血液の流れが滞ってしびれたり、汗をかいたりしますよね。そんなとき私たちは姿勢を緩めて状態を改善しますが、睡眠中は寝返りという方法でそれらを自然に行っているというわけです。

このように、寝返りがしやすいことが健康や快眠に欠かせない条件のひとつであることが分かります。寝返りは意識的に行えるものではないので、できる限り寝返りのしやすい環境を整えておくことが大切です。

正しい寝姿勢

正しい寝姿勢は、直立したときの姿勢だといわれています。直立姿勢とは、背骨が緩やかなS字カーブを描いている状態です。背骨には太い神経が通っているため、寝ているときでも正しい姿勢を保つことは非常に大切なことと言えるでしょう。

睡眠中にS字カーブを維持するためには、重力によって沈みがちな肩や腰部分などを上に押し上げる力が必要になってきます。それが、反発力です。反発力が低いために腰部分が沈み込み、寝姿勢が「くの字型」になってしまう寝具や、反対に反発力が強すぎて腰が浮いてしまう寝具は避けた方がいいのはそのためです。

特に腰痛がある方は症状を悪化させてしまう可能性があるため、ぜひとも改善したいところです。また、目覚めたときに疲労感があったり、手や腕、顔がしびれていたりといった症状がある方も、正しい寝返りや寝姿勢ができていないと考えられるので注意が必要でしょう。

寝姿勢は快眠をサポートするだけでなく、健康にも影響を与えます。1日の約3分の1に当たる時間を睡眠に費やしている計算です。できれば心身ともにリラックスした状態で過ごしたいものですよね。

高反発マットレスを選ぶときのポイント

マットレスにおける反発力の大切さをご理解いただけたら、次は高反発マットレスの選び方について説明しましょう。ひと口に高反発マットレスと言ってもその仕様はメーカーによってさまざまであり、自分の体に合った商品を選ぶことが大切です。ここでは、高反発マットレスで使われる代表的な素材「ウレタンフォーム」を主材料にしたマットレスに焦点を当て、選ぶときのポイントを4つに絞って説明していきます。

1. 反発力を表す「N」

ポリウレタンを発泡させたものをウレタンフォーム(ポリウレタンフォーム)といいます。密度の高いスポンジをイメージすると分かりやすいでしょう。このウレタンフォームマットレスの反発力を表す単位として用いられているのがN(ニュートン)です。値が高いほど反発力が高くなります。

それぞれに適した反発力は、体重や体格、筋肉量などで変わってきます。一般的に、小柄な人や体重の軽い人は反発力の低いものを、大柄な人や体重の多い人は反発力の高いものを選ぶ傾向にあるようです。以下に体重に応じて適した反発力の基準をまとめましたので参考にしてみてください。

  • 50kg以下のやせ型の人→100~150N
  • 50kg~80kgの標準的な人→150N前後
  • 80kg~100kgの大柄の人→180N前後
  • 100kg以上の人→200N前後

自分の体に対して反発力が高すぎると体が浮いてしまい、反対に反発力が低いと沈んでしまいます。正しい寝姿勢(背骨のライン)を保つためには、体が浮き沈みしない適度な反発を受けることがポイントです。

体重に対する反発力の高さはひとつの目安になりますが、反発力はもともとの姿勢や、姿勢を維持するための筋肉がどれほど付いているかなどにも関係し、さらにマットレスを敷く場所によっても異なってきます。数字だけで判断せず、あらゆる視点で評価することが大切です。

2. 耐久性を表す「D」

マットレスにも、もちろん寿命があります。毎日使用するものだからこそ耐久性に優れているものを選びたいですよね。

マットレスの耐久性は密度の高さで測ることができます。ウレタンフォームの密度で用いられているのがD(デンシティ)という単位で、この値が高いものほど密度が高く耐久性に優れています。一般的な基準としては25D以上、できれば30D以上が理想的といわれています。

密度の高さは反発力の持続性に関係します。「しばらく使っていたらヘタってしまった」という商品は、密度に問題があったのかもしれません。また、なんとなく「反発力が高い方が丈夫かな」と思う方もいるかもしれませんが、反発力の高さと耐久性は比例しないため切り離して考えるようにしましょう。

反発力や密度は、ウレタンフォームマットレスにおいて重要な基準です。NやDなどの客観的根拠をなしに高反発マットレスとうたっている商品も少なからずありますので、購入の際にはきちんと製品情報を見るようにしましょう。第三者機関の証明書が付いているとより安心して購入できます。

3. 「厚み」も重要

意外と見落としがちなのがマットレスの厚みです。一概にはいえませんが少なくとも5cm以上、できれば7~10cmくらいの厚みがあるものが望ましいとされています。薄いものだと床やベッドフレームに対する“底付き感”が気になることがあり、反発力や耐久力も損なう可能性があります。かといって厚すぎると移動や収納にひと手間かかり、値段も高くなりがちです。使用環境を踏まえ、適度な厚みのマットレスを選びましょう。

4. 通気性、衛生面も考慮しよう

人は寝ている間にコップ1~2杯の汗をかくといわれています。熱や湿気を放出できないとカビの原因にもなるため、通気性が優れたものを選ぶことをおすすめします。欧米製の商品は、そのマットレス文化の長さから商品精度の高さがうかがえますが、選ぶ際には日本の気候にも適しているかという点にも考慮しましょう。

ほかにも、マットレスカバーの取り外しは可能か、さらに家庭で洗濯ができるかなどの衛生面もポイントです。毎日使うものだからこそ、衛生的かつお手入れがしやすいことも大事な要素になります。

新素材について

ウレタンフォームとは別に、近年では新素材によるマットレスが登場しています。例えば、ポリエチレン素材を繊維状にして立体的な網目構造に仕上げた網目繊維構造素材を使ったマットレスがそのひとつに挙げられます。

インスタントラーメンのように繊維と繊維の間に空間があるため通気性に優れ、材質の特性からマットレス自体を洗えるという特徴もあります。網目繊維構造素材においてはウレタンフォームのような高反発や低反発といった統一された指標はなく、ハードやソフト、高密度や中密度などと表現されることも多いようです。

また、ウレタンフォームマットレスのなかでも、マットレス表面の形状に特徴のある商品もあります。体を面ではなく多数の点で支えることを目的に、表面に小さな凹凸をほどこしたものです。体との接地面が点になるため、同じN数でもやわらかく感じることから、より反発力の高い商品を選ぶことができ、結果としてさらに寝返りが打ちやすくなるという特徴があるようです。

それぞれに異なる特徴があるため、自分の体に合った素材、形状のマットレスをじっくりと選んでいきましょう。

高反発マットレスは「眠ってから決める」

これまでお伝えしてきた通り、高反発マットレスは、横になった瞬間の寝心地や、基準となる数値を確認しただけでは“本当に自分に合っているのか”を判断することが難しい商品です。実際に眠りについてみて、翌朝いかに気持ち良く目覚められるかが決め手になります。そのため、購入時にも考慮したいポイントがあります。

店頭で実物を見ながら購入したい方は、販売員の方から詳しく説明を受けるとともに、インターネットで長期ユーザーの声をチェックしてみてください。「使い続けるうちに体になじんできた」「腰の痛みが気にならなくなった」、反対に「はじめは良かったけど1カ月もしたら寝心地が悪くなった」「ムレて暑苦しい」などなど、さまざまな声を確認できるはずです。特に自分と近い体型や睡眠環境にいる方のレビューは参考になるでしょう。

ただし、一番良い方法は、やはりご自身で体感することです。無料お試し期間のある商品を選べるとベストです。特にこれまで柔らかいマットレスや布団で眠っていた方は、しっくりとこないケースもあるでしょう。それは、圧力のかかり方やかかる部位が異なるために感じる違和感かもしれませんし、姿勢そのものがそれまで使っていた寝具に悪影響を受けていることも考えられます。しばらくは矯正期間だと捉え、少なくとも1週間、可能であれば3カ月程度使ってみるといいでしょう。それでも起き心地が優れないようでしたら思い切って返却すべきです。高反発マットレスは“眠ってみないと分からない”商品なのです。

健やかな毎日を考えるならマットレスの見直しを

マットレスひとつで睡眠環境は大きく変わります。その影響は快眠をサポートするだけでなく、健康にもつながってくることが分かりました。自分にぴったりのマットレスと出会えると、朝起きたときの心地良さだけでなく、その日一日を気持ちよく過ごせるはずです。健やかな毎日のためにも、より良いマットレスを選択して活力ある日々を送りましょう。